【免疫とは】
~病気を免れること~
(1)「自己(自分自身の本来の細胞など)と,「非自己(抗原≒病原菌
(異物)自分の体の外から入ってきた細菌やウイルスなど)」を区別
し「非自己」を攻撃・殺傷・排除することです。
(2)時として,生命を脅かす変質した「自己(癌細胞など)」を攻撃
殺傷・排除し,『病気を免れる』働きをすることを免疫力と言います。
免疫力(自然治癒力)が無い限り,わたし達は誰一人としてこれから
も生きて行くことは出来ません。小さな病であっても,免疫力が無け
れば自ら病を癒すことが出来ず,更に,医療による手当てをどれ程
施されようとも,死を免れることは出来ないのです。
『免疫』という言葉の由来が,「病気(疫病)を免れる」というとこ
ろから来ているように,体内に侵入して来た抗原≒病原菌(異物)は
「自己ではないもの」と認識されます。また,癌細胞のような変質し
た自己も異物と見做され,攻撃・殺傷・排除されていきます。
このような免疫の仕組みを司っているのが,白血球のマクロファージ・
淋巴(リンパ)球・顆粒球などのような「免疫細胞」や,サイトカイン・
抗体のような「免疫物質」からなる『免疫系』と言われるものです。
(1)の説明
一つには,抗体などの役割があります。抗体などによって,一度ある
病原菌に感染することにより,その病気に対する抵抗力がつきます。
そして,次からは罹り難くなります。「免疫系」の一部の淋巴球は
体内に侵入した「自己以外のもの」,わたし達の体を病気にしよう
とする抗原との闘いを終える度に記憶します。つまり「免疫系」は
一度感染した抗原との闘い方を記憶しているので,症状が重くなる
前に体内から撃退することが出来ます。
身近な例として,「はしか」や「水疱瘡」などが挙げられます。これ等
の病気には,一度罹ると通常は二度と罹りません。これも「免疫系」の
記憶のお蔭と言えます。
この「一部の淋巴球の記憶」が,『免疫』と言われるものです。
二つ目には,顆粒球の役割があります。白血球の60%を占める顆粒球は
体内に侵入したブドウ球菌のような圧倒的多い,比較的大きなサイズの
「非自己≒病原菌」を,まるごと飲み込み消化・分解します。しかし
顆粒球は,このように体を守るシステムではあっても,自ら免疫を発生
するわけではありません。例えば,食中毒に罹り治ったからといっても
再び食中毒に罹らないわけではないということです。
顆粒球とは,淋巴球とのバランスに於いて,更に『自然治癒力』という
免疫力に関係し,免疫と深く関わる「免疫細胞」であり,免疫を語る
上で欠かすことの出来ない存在なのです。
つまり「免疫」は,体内システム全体に関わっているということです。
(2)の説明
「免疫系」は,「非自己」でもあると言える癌細胞のような「自己」
の細胞が変質したものまで攻撃することが判明されて来ました。
是までは,免疫系は自己以外の物の排除システムであり,免疫細胞が
癌細胞のような自己細胞を,自己の一部と見做して攻撃しないと考え
られて来ました。しかし,こうした認識は最近では完全に覆されて
NK(ナチュラルキラー)細胞(1,970年代発見)や,T(キラー)細胞が
癌細胞を直接攻撃をし,抗体などは,癌細胞を抗原≒病原菌(異物)と
見做し癌細胞に標識として付着し,間接的に攻撃を加えていることが
明らかになっています。
白血球のマクロファージなどが生産する細胞間の情報伝達・制御物質
であるサイトカインによって,活性・成長・分化させられたNK細胞は
通常は体内の隅々をパトロールしながら,癌細胞などの自己変質した
細胞を見つけては,直ちに攻撃・殺傷・排除しているのです。
【免疫の進化】
わたし達生物が,陸に上がる以前海中で生活していた頃は,体を守る
「免疫システム」は,外からの異物に対してだけではなく,「自己を
認識しながら,そこに異常があった時に働くシステム」が基本でした。
やがて陸上生活を営むようになると,次第に外的危険が増し「非自己」
へ備える「免疫」が発展しました。
水中生活 ⇒ 陸上生活
古い免疫 ⇒ 古い免疫+新しい免疫
出典:宝島
【免疫学の歴史】
1796年 天然痘予防 種痘の実施(ワクチン)
19世紀 病原微生物の発見
狂犬病に対するワクチンの開発
抗体の発見,マクロファージの発見
自然免疫の発見
20世紀 補体の発見,血液型の発見
アナフィラキシーの発見
アレルギーの発見,組織適合抗原の発見
クローン選択説,免疫寛容現象の発見
淋巴球が免疫応答の主役であることの発見
T/B 淋巴球の発見,NK細胞の発見
サイトカインなどの液性因子の発見
【21世紀の課題】
アレルギーの治療,自己免疫疾患の治療
免疫不全症候群(HIV:エイズ)の治療
免疫による癌治療,更に有効なワクチン開発
免疫抑制剤に依存しない臓器移植
免疫システムの再生と老化予防(再生医療)
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2011/11/03 08:00 文化の日記事 更新